まっくろせかい - 零版

幻想的〝芸術解題〟集

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『 姫様ズーム・イン 』 - もうひとつの姫物語


ちょっと前に、とりあえず何か聴きたい時には谷山浩子の暗い曲、
みたいなことを書いたけど、
それが現在の私の小さなブームだとしても、
よく聴く曲のパターンというのは、自分の生活史の中でどんどん更新されていく。
いつも同じ歌が好きというわけじゃない。まぁそんなことはあたりまえだけど。


けど、自分的に言わせてもらえば、
音楽の魅力というのは、究極的には
その作品がどれだけ官能に訴える力を持っているかという点にかかっていると思う。

なにもこれは、今回とりあげる曲が少しばかりエロいテイストの曲だから
そんなふうに言うわけではない。
「 官能 」 はセクシャルな部分も含めて、人間のすべての本能的欲求の到達点だ。


たくさん持っているCDやレコードの中で、繰り返し何度も聴くのは、
やはりなんらかの意味で聴いていて気持ちのいい曲であり、
とりわけ歌い手の声が官能的な魅力を持っている作品は何度も聴きたくなる。

もちろん歌詞やメロディやアレンジも重要ですよ。
でも声に魅力がなければ作品の価値は大きく損なわれてしまう。

ファンタジックな次元で語るとすれば、
シンガーにとっての声は、聴く者の感性に触れる手足や指先のようなものだ。



で、特に 「 最近の 」 お気に入りというわけではないのだが、
もうリリースされてから30年近く、結構コンスタントにプレーヤーにかける機会の多いのが、
今回とりあげる森川美穂の 『 姫様ズーム・イン 』 (1986年10月) だ。


これは、1985年デビューの森川美穂にとって、5枚目のシングルとなる。

タイトルや歌詞に 「 ズーム・イン 」 という言葉が出てくるのは、
この曲がミノルタカメラ 「 AFテレ 」 のCMソングだったから。
ちなみに 「 姫様 」 と書いて 「 ひいさま 」 と読む。

最初は当然ドーナツ盤のレコードでリリースされたが、
1988年3月には同一内容のものが8センチCDシングルで再リリースされている。


明るくリズミカルなメロディに
森川美穂の力強いボーカルがよく映える。

コミカルで、ちょっとエロティック。
もどかしいけれど嬉しくて仕方のないデートの時間がエンドレスで続いていくような、
夢のように楽しい曲だ。



で、物語のほうはというと、

これは簡単に言っちゃうと、
今で言う 「 肉食系女子 」 のヒロインが、
オタクっぽいマジメな男のコに惚れてしまうという、
まぁ 「 実際にはそんなことねーだろ! 」 というような設定のお話なのです。

でも私の経験からすると、
「 一体これはどーゆー組み合わせなんだ!? 」 と思うような
信じられない感じのカップルを街なかで目撃することが
極々まれに (本当にレアですけど) ありますから、
この曲のようなシチュエーションなんて、ちっとも不思議ではないとホント思うのです。

世界は広いし、 「 事実は小説より奇なり。恋はJ-POPより珍なり 」 とでも言うべきでしょうか。


で、デートで海沿いのパーキングに車を止めて、
彼女のほうは早いとこ先に進みたいんだけど、
マジメな彼はそんな気持ちを少しも察してくれないという状況。
車でデートするくらいだから、おそらく2人は大学生以上なのだろう。


彼女は肉食系 (←これはもうやめようか) ということで、
言葉遣いも少々粗野な感じになるのはわかるのですが、

私には何度聴いても頭が混乱してしまう箇所が一つあって、
それがココ。


あー 見こみなしのマザ・コン
あー 先にそそった おまえだけど



「 先に誘った 」 だったら意味わかるんですけど、
「 先にそそった 」 なんて言葉の使い方したことないから、
一体どっちがどうなったんだか、聴く度にいちいち引っかかるよ。

まぁたぶん、彼のほうからアプローチをかけたわけではないにしろ、
とにかく彼女が惚れてしまうような出来事が何かあったということでしょうね。



なんにせよ、この曲の一番の聴きどころは
「 Shira Yuki姫 」 が登場するパワフルなクライマックス。
森川美穂のボーカリストとしての力量に圧倒される至福の展開が始まる。


Shira Yuki姫はじめ
ほらリンゴは食べごろだよ
噛めば 愛の血が満ちる



いきなり 「 Shira Yuki姫 」 (白雪姫?) が出てくるのは、単なる言葉遊び?
歌ってるのは Miho なのだし、リンゴというアイテムが先にあったのか白雪姫が先なのか…。


童話の白雪姫は毒リンゴで深い眠りに落ちてしまうけど、
ここでのリンゴは、どうやらヒロイン自身の象徴らしい。
そして、今度は彼女が 「 そそる 」 番というわけだ。


考えてみれば、リンゴにしろ何にしろ、
食欲を 「 そそる 」 というのは、いつも食べる側の人間目線で
(だからこそ人間どうしの関係で、曖昧に 「 そそる 」 という言葉を使うと混乱するのだが)、
もし食べられるリンゴの側に立てば、 「 そそる 」 というのは誘惑の表現だ。

それはつまり、 “ 食べごろだよ。ひとくち齧ってごらん ” って言ってるわけだけど、
それって、まるまる 『 白雪姫 』 に出てくる (リンゴ売りに変装した) 継母の王妃のセリフだよね。

なんだ。だから 「 Shira Yuki姫 」 というわけか!


食べさせるリンゴは、ある意味確かに “毒” リンゴなのだけど(爆)、
食べさせる相手は憎い継子の姫ではなく、惚れてしまった男のコ。
いってみれば 「 王子様 」 なのかな?
そう。これは、姫が王子にリンゴを食べさせる物語だ。



「 Shira Yuki姫 」 はリフレインのたびに登場するけど、

いちばん最初の 「 Shira Yuki姫はじめ 」 は、
まさに私家版 「 白雪姫 」 作戦をこれから決行するという宣言のようだし、
そのあとに続いて

Shira Yuki姫まじめ / Shira Yuki姫いじめ / Shira Yuki姫けじめ


などと変化していくあたり、じっさい言葉遊びも窮まれりという感もあるけれど、
なんとかリンゴ (つまり自分) を食べさせようと四苦八苦しているヒロインの心情を捉えた表現にもなっているわけだ。
ただの言葉遊びというわけでもないんだね。




「 Shira Yuki姫 」 の謎解き(?)が終わったら、
あとはもう森川美穂のパワフルボイスに身をゆだねながら、
この愛すべきもうひとつの 『 白雪姫 』 の物語の行く末に思いを馳せてみよう。
意外に純情な姫の心の中が、あなたにも見えてくるかもしれない。





ところで、某動画サイトには、テレビでこの曲を歌う森川美穂の動画がアップされている。

振り付けも (特にサビの部分とか) 結構切れのいい感じで、
細かい表情にも気を配って活き活きと歌ってるのを見ると、
ホント歌うことが好きなんだとわかるし、
みんなを楽しませようとするプロとしての意識の高さも窺える。


この曲を歌ってた頃の森川美穂は、まだ純粋に 「 アイドル歌手 」 として活動していたわけだけど、
次のシングルの 『 おんなになあれ 』 (1987年3月) あたりから次第にアーティスト志向を前面に出してくる。

というか、それは以前から森川美穂自身が目指していた方向性でもあっただろうし、
『 おんなになあれ 』 という曲に彼女がインスパイアされた部分も大きかっただろう。




で、そのあたりの事情とも絡んでくるのだけど…、
じつを言うと、私はずっと
この 『 姫様ズーム・イン 』 という曲のことを森川美穂本人が凄く嫌っているのだと
何の根拠もなく、ごく最近まで思い続けていたのだ。

森川自身がそんな発言をしたのを聞いたことなんて一度もないのにだ。
どうしてそう思うようになったのかは、よくわからない。

ただ、アイドルだった森川美穂がアーティストとして大成していく様子を見て、
(それも熱烈なファンとしてではなく、一人の傍観者のように垣間見るだけの年月のなかで)
自分はこの 『 姫様ズーム・イン 』 が大好きだけど、
彼女はもう歌いたくもないんだ、などと一人で思い込んでいた。
彼女のライブにも行ったことないくせに。


これもまた一人のアーティストに対する私の幻想、またの名をファンタジーと言うべきか。
なんていうネガティブなファンタジーなんだ!



それで今回この記事を書くにあたって、
森川美穂のオフィシャルブログでブログ内検索をかけてみた。
そしたら 「 姫様ズーム・イン 」 で1件ヒット。

2009年11月の記事で
「 もし還暦まで歌い続けていたとしたら、その時のセットリスト10曲は? 」
という趣旨の質問に対する答えの10曲の中に 『 姫様ズーム・イン 』 がちゃんと入ってた。

おそらくライブとかでも歌ってたんでしょうね。


自分の馬鹿さ加減に安心(?)して、
めでたしめでたしといったところだけど、

これで私がアイドル批評家としてモグリだということがバレてしまいましたね。


いや、めでたしめでたし。





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  1. 2014/10/13(月) 23:06:01|
  2. 音楽
  3. | コメント:0

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